船舶免許を取得するためには、身体検査・学科試験・実技試験の3つの試験にそれぞれ合格しなければなりません。
このうち、実技試験では実際に船舶を操縦するため、勉強すれば独学でも合格が目指せる学科試験とは異なり、合格のために実技講習を受けるのが一般的です。
中には、「小型船舶の実技試験は難しい?」「小型船舶を操縦できるか心配」など、不安に思う方もいるでしょう。実技試験は講習さえ受ければ難しくなく、誰でもチャレンジして合格を目指せます。
この記事では、船舶免許における実技試験の概要や免許別の難易度、試験内容を紹介します。
船舶免許の実技試験について
船舶免許の国家試験は、一般財団法人日本海洋レジャー安全・振興協会が実施しています。
ここでは、船舶免許の実技試験について解説します。
国家試験免除コースと国家試験受験コースがある
船舶免許の実技試験には、国家試験免除コースと国家試験受験コースの2種類があります。
国家試験免除コースとは、国土交通省が認可している登録小型船舶教習所に通い、講習と修了審査を受けると国家試験が免除になるコースです。一方の国家試験受験コースとは、ボートスクールなどで講習を受け、そのあと国家試験を受けて合格を目指すコースとなります。
なお、登録小型船舶教習所の国家試験免除コースでは、講習と修了審査を受ける場所や使用される船舶は同じです。講習で使用した船舶で、そのまま操船感覚を保ったまま審査が受けられる点でもメリットが大きいといえます。
指導する教員も研修機関で研修を受け、教員試験に合格した有資格者です。そのため、初心者や試験が苦手な方も、時間をかけて基礎から講習を指導してくれるメリットがあります。
実技試験の独学合格は難しい
実技試験では、実用的な操船や航行の技術も出題されるため、小型船舶教習所やボートスクールに通って合格を目指すのが一般的です。
船舶免許において、学科試験はテキストを使って自身で学習し、合格を目指すこともできます。しかし、船舶の操船が必要となる実技試験では、独学で合格を目指すことは難しく、国家試験受験コースにおいても事前に講習を受けないと合格は難しいです。
合格基準について
船舶免許の実技試験の合格基準は、計300満点の減点方式で行われ、試験科目別の成績が配点の60%以上かつ、成績の合計が70%以上(210点以上)であれば合格です。
実技試験の内容は船舶免許の種類によって異なるものの、採点方法や合格基準は共通となっています。なお、国家試験免除コースで船舶免許の取得を目指す場合、修了審査の内容や採点基準は国家試験と同じです。
一級小型船舶操縦免許、二級小型船舶操縦免許
一級船舶免許と二級船舶免許は操船できる船舶の大きさが同じで、試験も共通です。
実技試験の科目は、「小型船舶の取り扱い」「基本操縦」「応用操縦」の3つです。
ここでは、一級船舶免許と二級船舶免許の実技試験の内容を解説します。
実技試験に使用される船舶
一級船舶免許と二級船舶免許の実技試験で使用される船舶は、5トン未満のものを使用し、原則として受験者3人に対して試験員1人で実施します。受験者1人に対する試験時間はおおむね30分前後です。
なお、一級船舶免許と二級船舶免許では総トン数20トン未満の船舶を操船できますが、試験では5トン未満の船舶で長さが5~7mくらいの船を使用して実施されています。
小型船舶の取り扱い
一級船舶免許と二級船舶免許の実技試験における「小型船舶の取り扱い」の科目は配点60点です。
「小型船舶の取り扱い」は桟橋に係留されている試験艇で実施し、下記の項目から出題されます。
- 船体・操縦席の点検
- エンジンの点検
- 法定備品の点検
- 機関運転
- トラブルシューティング
- 解らん・係留
- 航海計器の取扱い
- 結索
小型船舶の取り扱いでは、船舶の点検や出航の準備、ロープの結び方などがポイントです。
基本操縦
一級船舶免許と二級船舶免許の実技試験における「基本操縦」の科目は配点120点です。
試験は実際に試験艇を操縦して実施し、下記の項目から出題されます。
- 発進・直進・停止
- 変針
- 後進
- 蛇行
基本操縦では、船舶の基本的な操縦が正しくできるかどうかがポイントです。
応用操縦
一級船舶免許と二級船舶免許の実技試験における「応用操縦」の科目は配点120点です。
試験は実際に試験艇を操縦して実施し、下記の項目から出題されます。
- 避航操船
- 人命救助
- 着岸
- 離岸
応用操縦では、船舶を適切に避航できるかどうか、人命救助が適切に行えるか、着岸・離岸が正しく行えるかなどがポイントです。
二級(湖川小出力限定)小型船舶操縦免許について
二級(湖川小出力限定)小型船舶操縦免許の実技試験の科目と配点は、小型船舶の取り扱いの科目(配点60点)と操縦の科目(240点)となっています。
一級船舶免許と二級船舶免許に比べると内容は少なく、最初は係留している状態で行い、次に発進・停止、そして人命救助と係留・解らんで終わりです。
特殊小型船舶免許
特殊小型船舶免許は、ジェットスキーや水上バイクなど、水上オートバイを操船するための免許です。
実技試験の科目は、「小型船舶の取り扱い」「操縦」の2つです。
ここでは、特殊小型船舶免許の実技試験に使用される船舶や試験内容を解説します。
実技試験に使用される船舶
特殊小型船舶免許の実技試験に使用される船舶は、3人乗りのシッティングタイプ(座って乗る)の水上オートバイです。
受験者1人に対して試験員1人が同乗して行い、試験時間はおおむね15分〜20分です。特殊小型船舶免許は水上オートバイに特化した免許であるため、実技試験でボートの操縦を行うことはありません。
小型船舶の取り扱い
特殊小型船舶免許の実技試験における「小型船舶の取り扱い」の科目は配点80点です。
試験は実際に試験艇を操作し、下記の項目から出題されます。
- 発航前の点検
- 結索
- 機関運転
小型船舶の取り扱いでは、発航前の点検をはじめ、ロープの係留やエンジン始動・停止などを行います。
操縦
特殊小型船舶免許の実技試験における「操縦」の科目は配点220点です。
試験は実際に試験艇を操作し、下記の項目から出題されます。
- 安全確認
- コース操行
操縦では、操行中に周囲の安全確認をするとともに、コース走行では単旋回や危険回避、8の字旋回、スラロームなどを行います。
船舶免許の実技試験のポイント
船舶免許の実技試験ではどのような点に注意したらいいのでしょうか。
ここでは、船舶免許の実技試験のポイントを紹介します。
操船前の準備
船舶免許の実技試験では、船舶を操縦する前に船体の点検が必要となるため、これらをしっかり押さえておきましょう。
船体・操縦席の点検では、船体の安定状態、浸水の有無、など計8項目の中から2題出題されます。エンジンの点検では、バッテリー、メインスイッチ、燃料油量など計11項目の中から2題されます。
法定備品の点検では計8項目あり、ライフブイやライフジャケットなどから2項目の出題です。また、トラブルシューティングとして、スターターモーターが回らない、エンジンが始動しない場合の対処などから1問出題されます。
点検の際には点検場所を教えてくれるため、船体の各部位の場所を把握しておき、指示の通りに実施しましょう。
発進から蛇行まで
船舶免許の実技試験における基本操縦では、発進から蛇行に至るまで、一つひとつの操縦に対して声を出して動作確認を行いながら操船することが大切です。
声を出すこと自体は採点に影響するものではありませんが、たとえば、船舶を動かす際には「発進します!前後左右確認よし」のようにしっかり発声しながら行うことは、自分自身への動作確認として有効な方法といえます。
蛇行は滑走状態(中速程度の速度)で行う連続旋回のことで、50m間隔で設置されている3個のブイを使用してスラロームを行います。
蛇行は実技試験の中ではやや難易度が高く、一つのブイだけを見ず、次のブイも確認しながら速度調整とコース取りすることが大切です。ブイのすぐそばを通るコース取りをすると、S字が小さくなり、減点される可能性もあります。滑らかにS字を描くように操行するのがコツです。
また、車と違って海には車線がなく、どこを通ったらいいかわかりにくい部分もあります。蛇行する前には、あらかじめどこを通るかイメージを固めてから試験をスタートしましょう。
人命救助
船舶免許の実技試験では、ブイを要救助者と想定して救助を行う人命救助があります。
人命救助は、試験から要救助者の発見を告げられたのち、周囲の安全を確認しながら船舶を操縦し要救助者に接近し、ボートフックでブイを回収する流れです。風や波によって試験艇が流されてしまうため、これらの状況も判断しながら適切に人命救助を進めていく必要があります。
人命救助のポイントは、要救助者を見失わないように低速でブイに近づくことです。速度を上げてしまうと波がたち要救助者に危険が及びますし、停止できずに要救助者に乗り上げてしまう可能性があります。
なお、人命救助に失敗したからといって実技試験に絶対落ちるとは限らないため、最後まで諦めないようにしましょう。
着岸
一級船舶免許と二級船舶免許では、桟橋や係留設備などの指定された場所に船を寄せて付ける着岸という項目があります。
試験本番では試験官に「着岸してください」と言われるため、右舷着岸または左舷着岸の指示に従います。右舷、左舷の指示がないときは、自分で選択しなければなりません。
着岸は低速で行うため風や波の影響を受けやすく、風が吹いている方向によって進入角度を調整する必要があります。
着岸で気をつけることは、十分減速してゆっくりと着岸することです。スピードを出したままだと停船できずに桟橋に突っ込んでしまい、失敗に終わる可能性があります。速度が遅ければ、風や波があっても前進・中立を繰り返しながら速度調整をして着岸できます。
ロープワーク
ロープワークとは船舶の運用時にロープを桟橋と結んだり、錨にロープを結んだりするときに使用する結索(結び)で、船舶免許の試験においても実際に行う必要があります。
一級船舶免許と二級船舶免許では、以下のロープワークから1つが出題されます。
- 巻き結び
- クリート止め
- もやい結び
- いかり結び
- 一重つなぎ
- 二重つなぎ
- 本結び
特殊小型船舶免許においては、もやい結び・巻き結び・クリート止め・一重つなぎのうちから1つの出題です。ロープワークの種類は、ランダムに試験官からその場で出題されるため、それぞれの結び方を把握しておく必要があります。
また、どのロープワークを指示されても対応できるように、実際にロープを使って反復練習しておくと安心です。
口頭の質問対策
船舶免許の実技試験では、口頭でも質問されるため、学科講習についても復習したうえで試験に臨みましょう。エンジントラブルなどのトラブルシューティングの内容が中心です。
口頭質問に答える際には試験官に伝わるように、はっきりとした言葉で、また動作を取る場合は確実な動作で答えましょう。
まとめ
この記事では、船舶免許の実技試験の内容やポイントについて免許の種類ごとに紹介しました。
船舶免許には、一級小型船舶免許、二級小型船舶免許、二級(湖川小出力限定)小型船舶操縦免許、特殊小型船舶免許の4種類があります。それぞれの免許の試験ごとに実技試験が設けられており、300点満点の減点方式で行われ、総合計70%以上の点数を取ると合格です。
実技試験は実際に船舶の点検や操船を行うため、学科試験のように独学で合格を目指すことは難しく、登録小型船舶教習所やボートスクールに通うのが一般的です。
登録小型船舶教習所であれば、国家試験免除で船舶免許の取得を目指すこともでき、さらに実績豊富な教員による講習を受けられるメリットもあります。
船舶免許の取得を目指すなら、滋賀ボートセンターにお任せください。
滋賀ボートセンターは、国土交通省に認可されている登録小型船舶教習所で、国家試験免除コースをご用意しています。講習を受けた同じ会場、同じボートで、そのまま学科修了試験と実技修了試験を行うため、安心して試験に臨めます。
実技試験について不安なところがある場合も、実績のある教員が丁寧にサポートいたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。