
エンジン付のヨットやボートを操縦するためには、船舶免許が必要です。
船舶免許の中でも身近な免許である小型船舶免許は、その名の通り小型船舶に特化している免許です。また、小型船舶免許の種類によっても操縦できる船舶の大きさや種類に違いがあるため、どんな船舶を操縦したいかによっても取得すべき免許は異なります。
この記事では、小型船舶の大きさの定義や免許の種類ごとに操縦できる船舶の大きさを解説します。
小型船舶の大きさについて

小型船舶免許で操縦できる船舶の大きさは、免許の種類によって異なります。
ここでは、小型船舶の大きさについて解説します。
小型船舶の大きさの定義
国土交通省によると、小型船舶の定義は「総トン数20トン未満の船舶」です。
ただし、総トン数20トン以上のプレジャーボートでも以下の要件を満たしている場合は小型船舶免許で操縦できます。
- 一人で操縦を行う構造であるもの
- 長さが24m未満であるもの
- スポーツ又はレクリエーションに用いられるもの
つまり、総トン数20トン以上であっても、長さが24m未満であり、レジャー用のボートであれば小型船舶の免許があれば操縦できるというわけです。
一方、小型船舶の中でも以下の要件を満たすものは小型船舶免許がなくても操縦できます。
- 長さが3m未満であるもの
- 推進機関の出力が1.5kw(約2馬力)未満であるもの
- ただちにプロペラの回転を停止できる機構を有する船舶、またはその他のプロペラによる人の身体の障害を防止する機構を有する船舶
レジャーに用いる船舶は長さ24mまで操縦できる
以上のように、レジャーのみに用いる船舶であれば総トン数20トン以上でも長さ24mまでなら操船できます。
ここでいうレジャーに用いる船舶とは、フィッシングボート、ヨット、クルーザー、モーターボートなどのプレジャーボートで、漁船や旅客船などの業務用以外の船舶です。
長さ24mとは船舶の全長のことで、船体に固定的に附属する突出物も含め、船首最前端より船尾最後端までの水平距離です。
なお、24メートルクラスのボートになると、かなり豪華で高額な船となります。世界の富豪が所有するような大型クルーザーで「ヨット」と呼ばれるような船です。
小型船舶の総トン数は重量ではなく容積
船舶の大きさを示す総トン数ですが、総トン数とは重量ではなく容積を表す指標です。そのため、船舶の重さとは関係なく、容積が大きな船舶ほど総トン数も大きくなります。
ちなみに、船舶にトンという単位が使われるようになったのは15世紀頃のイギリスとされています。この時代は、船に積めるぶどう酒の大だるの数で船から徴収する税金を決めていたとされています。
酒樽をどれだけ積めるか数える際、棒でたるをたたくと「タン」と音がするため、これがなまってトンと呼ばれるようになりました。
このように、総トン数20トンといっても船の重さが20トンではなく、船舶全体の容積が20トンとなります。
船舶の大きさを表す総トン数の算定方法
船舶の総トン数を算出するためには、船体および船室などによって囲われている空間の容積を計算します。
一番上の甲板(上甲板)より下の船体主部と、上甲板上の船室などの上部構造物に分けて計算・算出するのが一般的です。
大型船舶については多数の断面積から積分して算出しますが、小型船舶に関しては簡易的に「L(長さ)×B(幅)×D(深さ)×0.65」という計算式が用いられ、単位は立法メートルで計算します。
これらの計算によって算出された総容積に一定の係数を掛けたものが総トン数です。複雑な計算ですが、おおむね7立方メートルで総トン数1トンとなります。
小型船舶と大型船舶の違い
船の大きさは船舶法という法律で定められており、総トン数20トン以上が大型船として区別されています。
大型船舶を操縦するためには、小型船舶免許ではなく、海技免許と呼ばれる国家資格を取得しなければなりません。海技免許を取得するためには、船員としての一定期間の乗船経験を積んだうえで(乗船履歴)、海技士国家試験に合格し、かつ海技免許の区分に応じた海技免許講習を受ける必要があります。
このように、海技士国家試験を受けるためには乗船履歴があることも必要であるように、小型船舶免許とはまったく異なる資格で、船員などの職業用の免許です。
小型船舶免許で操縦できる船の大きさ

小型船舶免許で操縦できる船舶の大きさや種類は免許の種類によって異なります。
ここでは、それぞれの免許で操縦できる船舶の大きさや種類を紹介します。
一級小型船舶免許
一級小型船舶免許で操縦できる船舶の大きさは、総トン数20トン未満の船舶です。
総トン数20トン以上でもプレジャーボートで、長さが24m未満、一人で操縦を行う構造である船舶は操縦できます。
一級小型船舶免許は小型船舶免許の上位資格であり、小型船舶の定義を満たしている船舶なら操縦可能です。
また、一級小型船舶免許は航行制限がなく、海や湖、川などすべての水域で航行できる特徴もあります。クルーザーでの長距離クルージング、外洋でのヨットセーリング、大物トローリングなども楽しめます。
ちなみに、一級小型船舶免許は18歳から取得可能です。
二級小型船舶免許
二級小型船舶免許で操縦できる船舶の大きさは、一級小型船舶免許と同じく、総トン数20トン未満の船舶です。
一級小型船舶免許と二級船舶免許では、操縦できる船舶の大きさに違いはありません。そのため、一級小型船舶免許で操縦できて、二級小型船舶免許で操縦できない船舶はないです。ただし、二級船舶免許は指定された平水区域と海岸から5海里までの航行制限があります。
二級小型船舶免許は16歳から取得できます。
なお、16歳から18歳の誕生日を迎えるまでは、操縦できる船舶の大きさが総トン数5トン未満に限定されるため注意が必要です。
18歳の誕生日を迎えると自動的に5トン未満の制限は解除され、総トン数20トン未満の船舶が操縦できるようになります。
二級(湖川小出力限定)小型船舶免許
二級(湖川小出力限定)小型船舶免許で操縦できる船舶の大きさは、総トン数5トン未満(出力15kW≒20馬力未満)です。
この免許は湖・川および指定された区域のみ航行できる船舶免許であり、バスフィッシングのように、限定された水域のみで船舶を操縦する際に取得します。
一級小型船舶免許や二級小型船舶免許に比べて取得にかかる費用や時間が少ない分、船舶の大きさや航行範囲に制限があります。
二級(湖川小出力限定)小型船舶免許も、二級小型船舶免許と同じく16歳から取得できる免許です。
特殊小型船舶免許
特殊小型船舶免許で操縦できる船舶は、水上オートバイやジェットスキーなどの水上バイクのみです。水上バイクの大きさは長さ4m未満、幅1.6m未満とされています。湖や川、海岸から2海里(約3.7km)以内を航行できます。
なお、水上バイクは一級小型船舶免許や二級小型船舶免許を取得していても、特殊小型船舶免許がなければ操縦できません。反対に、特殊小型船舶免許だけではボートやヨットなどの操縦ができないため、それぞれ操縦するためにはそれぞれの免許を取得する必要があります。
特定漁船で操船できる小型船舶の大きさは例外

小型船舶の範囲の見直しによって、令和2年7月1日から一定の基準に適合する特定漁船が、船舶職員および小型船舶操縦者法上の小型船舶となりました。
一般の方には関係の無い話しですが、ここでは、特定漁船で操船できる船舶の大きさを紹介します。
特定漁船は総トン数80トン未満まで操船できる
特定漁船では、長さ24m未満で総トン数80トン未満までの漁船を操縦できます。
ただし、特定漁船を操縦する際には沿岸区域の境界から、外側80海里以遠の水域を航行しない漁船であることが条件です。また、出力750キロワット未満の推進機能を有しており、操舵位置において一人で操縦できる構造の漁船である必要もあります。
他にも以下のようなルールがあります。
- 機関区域が無人の状態であっても、警報により直ちに機関区域に行くことができるよう措置された漁船
- 軽油又はA重油を内燃機関の燃料として使用する漁船
- 一航海の期間が10日を超えない漁船
- 適切な見張りを維持するための体制が確保された漁船
- 僚船による支援体制が確保された漁船
- 遊漁船でないこと
これらの条件を満たすと、特定漁船として小型船舶免許でも操縦できます。
特定漁船とは
そもそも特定漁船とは、一級小型船舶免許を取得している者が、特定漁船講習を受け特定の条件を満たすと総トン数80トン未満までの漁船を操縦できるというものです。
令和2年7月1日より前は、大型海技免状保有者が最低2名いないと特定漁船の操縦ができませんでした。しかし、法改正によって特定漁船を小型船舶と定義し、特定漁船講習の修了を条件に、小型船舶免許保有者1名のみで操縦できるようになっています。
この法改正によって、小型船舶免許証には「特定漁船の操船不可」という内容の能力限定が付与されています。この能力限定を解除しないと、特定漁船を操縦することはできません。
小型船舶免許を取得する流れ

小型船舶免許は、航行したい場所や乗りたい船舶の大きさ、種類に合わせて取得する免許を決めます。
ここでは、小型船舶免許を取得する流れを紹介します。
取得する免許を選ぶ
小型船舶の操縦を行うためにも、まずは取得する免許を選びましょう。
4つの小型船舶免許のうち、二級小型船舶免許がスタンダードな免許です。航行できるのは陸地から5海里と定められているものの、沿岸のマリンレジャーであれば問題ありません。
最初から外洋で航行したい場合は一級小型船舶免許、小馬力ボートでのバスフィッシングなら二級(湖川小出力限定)小型船舶免許がよいでしょう。
また、ボートに加えて水上バイクも操縦したい場合は、二級小型船舶免許や一級小型船舶免許と合わせ、特殊小型船舶免許の同時取得をおすすめします。その理由は、一つずつ取得するよりも、同時に取得した方が費用も安く済むためです。
免許を取得する登録小型船舶教習所やボートスクールを選ぶ
取得したい小型船舶免許の種類が決まったら、次は免許の取得方法を決めましょう。
小型船舶免許は実技試験で船舶の操縦が必要となるため、登録小型船舶教習所やボートスクールに通って取得するのが一般的です。
登録小型船舶教習所は国家試験免除コースを用意しており、既定のカリキュラムを受講して、修了審査に合格すると免許が取得できます。学科試験に関しては、独学で勉強して国家試験を受けることも可能です。
一方、ボートスクールは講習を受け、国家試験を受けて船舶免許の取得を目指します。
登録小型船舶教習所は国土交通省に登録されている機関であり、教員資格を持っている講師の講習が受けられ、実用的な知識や技術が身につくためおすすめです。
小型船舶免許取得の流れ
小型船舶免許を取得する場合、免許取得の流れは以下の通りです。
- ①登録小型船舶教習所もしくはボートスクールに申し込む
- ②学科、実技の講習を受講する
- ③登録小型船舶教習所の場合は修了審査、ボートスクールの場合は国家試験を受ける
- ④ 試験に合格する
- ⑤免許証が交付される
なお、小型船舶免許を取得するためには身体検査に合格しなければなりません。国家試験免除コースの場合だと、事前に病院を受診して小型船舶操縦士身体検査証明書を作成してもらう必要があります。国家試験を受ける場合、学科試験の当日に学科試験の会場で受けます。
まとめ
この記事では、小型船舶免許の種類ごとに操縦できる船舶の大きさを解説しました。
小型船舶とは総トン数20トン未満の船舶であり、ここでいう総トン数とは重さではなく、船舶の容積のことです。一級小型船舶免許、二級小型船舶免許があれば、総トン数20トン未満の船舶を操縦することができます。
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