
漁船を操船して漁業を行うためには、船舶免許を取得しなければなりません。
船舶免許にはさまざまな種類があり、どんな漁船に乗るかや目的により取得すべき免許が異なります。
勉強して免許を取得してから後悔しないためにも、免許ごとに操船できる漁船の種類を理解しておきましょう。
この記事では、漁船の操船で必要な船舶免許の種類や、それぞれの免許で可能な漁業について紹介します。
二級小型船舶操縦士免許で操縦できる漁船

二級小型船舶操縦士免許は「2級船舶免許」「ボート免許2級」とも呼ばれ、小型船舶免許の中においてポピュラーな免許です。
ここでは、二級小型船舶操縦士免許の概要や操縦できる漁船を紹介します。
二級小型船舶操縦士免許とは
二級小型船舶操縦士免許とは、海岸より5海里(9.26km)以内の水域でのボート釣りやクルージング、漁業ができる免許です。
海への入門ボート免許という位置づけにありますが、沿岸なら自由に航行できるため、沿岸漁業であれば問題なく行うことができます。
また、湖や川など海ではない水域だと5海里の制限はなく、全域で航行できるため、琵琶湖のように広大な湖を自由に航行することも可能です。
二級小型船舶操縦士免許で操縦できる漁船
二級小型船舶操縦士免許で操縦できる船舶の大きさは、総トン数20トン未満、プレジャーボートの場合だと全長24m未満です。
そのため、二級小型船舶操縦士免許があれば総トン数20トンまでの漁船を操船できます。
二級小型船舶操縦士免許で可能な漁業
二級小型船舶操縦士免許で可能な漁業は沿岸漁業です。
沿岸漁業は陸地が見える程度の沖合で行われる漁業のことで、ほとんどが日帰りで地域や季節に合った獲物を狙います。カキやワカメ、魚の養殖も沿岸漁業の一つです。
漁の方法には、かご漁やはえ縄漁、定置網漁などがあり、10トン未満の小型船舶を用いて行われることが多いです。
二級小型船舶操縦士免許を取得する方法
二級小型船舶操縦士免許を取得するための条件は、年齢が16歳(受験資格は15歳9か月から)以上であることで、それ以外の受験資格はありません。
免許を取得するためには、身体検査・学科試験・実技試験に合格する必要があります。試験内容は以下の表を参考にしてください。
試験の種類 | 試験の内容 |
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身体検査 | 視力検査、聴力検査、疾病および身体機能の障害の有無等 |
学科試験 |
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実技試験 |
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二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)で操縦できる漁船

二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許は、湖や川限定で船舶を操船できる免許です。ここでは、二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許の概要や操縦できる漁船を紹介します。
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)とは
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)とは、二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許とは、航行できる水域が湖、川のみに限定され、操縦できる船のエンジンの出力(馬力)も限定された免許です。
バスフィッシングを目的としている場合や、湖や川で漁業を行うなど、用途が限定されているときに取得します。他の船舶免許に比べ、難易度が低い免許です。
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)で操縦できる漁船
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)で操縦できる船舶の大きさは、総トン数5トン未満で出力15kW未満(20馬力未満)となります。
一般的な二級小型船舶操縦士免許に比べると、操船できる漁船の大きさは小さいです。
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)で可能な漁業
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)があれば、湖や川で行う内水面漁業が可能となります。
内水面漁業には投網や地引網などを用いる方法や、コイやマス、ウナギなどの養殖も挙げられます。
内水面漁業で船舶を用いる際も、総トン数5トン未満の船舶でほとんどの漁業が可能です。
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)を取得する方法
二級小型船舶操縦士免許(湖川小出力限定)の受験資格は、年齢が16歳(受験資格は15歳9か月から)以上であることです。
免許を取得するためには、身体検査・学科試験・実技試験の3つにそれぞれ合格する必要があります。試験内容と合格基準は、以下の表を参考にしてください。
試験の種類 | 試験の内容 |
---|---|
身体検査 | 視力検査、聴力検査、疾病および身体機能の障害の有無等 |
学科試験 |
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実技試験 |
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一級小型船舶操縦士免許で操縦できる漁船

一級小型船舶操縦士免許は「1級船舶免許」「ボート免許1級」とも呼ばれ、小型船舶免許の中では最上位の免許です。
ここでは、一級小型船舶操縦士免許の概要や操縦できる漁船を紹介します。
一級小型船舶操縦士免許とは
一級小型船舶操縦士免許とは、海・湖・川すべての水域で船舶の操船ができる免許です。
二級小型船舶操縦士の上位免許となりますが、いきなり一級小型船舶操縦士免許を取得することもできます。
ロングクルージングやヨットでの世界一周も可能となり、漁業においても広範囲にわたって可能です。
一級小型船舶操縦士免許で操縦できる漁船
一級小型船舶操縦士免許で操縦できる船舶の大きさは、総トン数20トン未満、プレジャーボートの場合だと全長24m未満までとなっています。
そのため、二級小型船舶操縦士と一級小型船舶操縦士で操船できる漁船の大きさは同じで20トン未満です。
一級小型船舶操縦士免許で可能な漁業
航行制限のない一級小型船舶操縦士免許があれば、沿岸漁業をはじめ、沖合漁業や遠洋漁業などが可能です。但し、海岸から12海里以遠の水域で操業する漁船には、航行できる水域として、従事する漁業種類などによって「従業制限」が指定されます。
漁の方法は、沖合漁業だと巻き網漁や底引き網漁、遠洋漁業だとはえ縄やカツオの一本釣漁、トロール漁などがあります。
ただし、沖合漁業や遠洋漁業になると大規模な設備が必要となるため、漁によっては100トンを超えるような船舶の操縦が必要です。
この場合だと、一級小型船舶操縦士免許では操船できません。
一級小型船舶操縦士免許を取得する方法
一級小型船舶操縦士免許を取得するための条件は、年齢が18歳(受験資格は17歳9か月から)以上であることで、それ以外の受験資格はありません。
免許を取得するためには、身体検査・学科試験・実技試験の3つにそれぞれ合格する必要があります。二級小型船舶操縦士免許があると、実技試験は免除となり学科試験も一部免除です。
試験の種類 | 試験の内容 |
---|---|
身体検査 | 視力検査、聴力検査、疾病および身体機能の障害の有無等 |
学科試験 |
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実技試験 |
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遊漁船の操縦には特定操縦免許が必要

漁業をする漁船であっても、釣り船や瀬渡し船などの遊漁を兼業する場合は、小型遊漁兼用船として、小型船舶操縦免許以外に特定操縦免許の取得が必要です。ここでは、特定操縦免許について解説します。
特定操縦免許とは
特定操縦免許とは、遊漁船や旅客船など人の輸送をする小型船舶の船長として操縦する場合に必要となる免許です。
一級小型船舶操縦士免許もしくは二級小型船舶操縦士免許を取得していることを条件に、既定の講習を受講し、修了審査に合格すると取得できます。
講習や修了審査を通して、救命に関する知識の他、天候などの状況から出航判断の仕方、安全意識、危機回避などの知識を習得します。
漁船の操縦で特定操縦免許が必要になるケース
漁船の操縦で特定操縦免許が必要になるのは、遊漁船のように「お客さん」を乗せた船舶を操船する場合です。
遊漁船以外ですと、屋形船、遊覧船、花火クルーズ船、ホエールウオッチング船なども特定操縦免許が必要となります。
漁業のみを行っている場合は、他に乗組員がいたとしても特定操縦免許は必要ありません。
特定操縦免許取得の流れ
特定操縦免許は、救命に関する7時間の講習と、船長の心得、運航に関する知識の講義4時間に加え、4時間の操縦による実習の合計15時間の講習を受け、最後に修了試験に合格すると取得できます。
修了試験に不合格の場合は、合格基準に達するまで何度も補講と再試験が行われることになります。
なお、令和6年3月31日までに特定操縦免許を取得していた場合、令和8年3月31日までに4時間の講義と4時間の実習(旅客船、遊漁船の船長として一定の乗船履歴があれば実習は免除)による移行講習を受け、修了試験に合格すれば新しい特定操縦免許に切り替えできますが、この移行講習を受けなければ特定操縦免許は無効となります。
また、新たな特定操縦免許では一定の乗船履歴がない場合、小型旅客船や遊漁船に船長として乗船できる航行区域は平水区域に限定される点にも注意しましょう。
特定漁船講習を受けると80トン未満の漁船が操縦できる

小型船舶免許は総20トン未満という制限がありますが、特定漁船講習を受けることにより、総トン数80トン未満の漁船を操船できるようになります。
ここでは、特定漁船の概要や講習内容を紹介します。
特定漁船とは
特定漁船とは、以下の基準を満たしている漁船のことです。
- 長さ24m未満
- 沿海区域の境界からその外側80海里以遠の水域を航行しない
- 総トン数80トン未満
- 出力750キロワット未満の推進機関を有する
- 操舵位置において、一人で操縦を行う構造
- 機関区域が無人の状態であっても、警報により直ちに機関区域に行くことができるよう措置されている
- 軽油又はA重油を内燃機関の燃料として使用する
- 一航海の期間が10日を超えない
- 適切な見張りを維持するための体制が確保されている
- 僚船による支援体制が確保されている
- 遊漁船でない
令和2年7月1日に船舶職員および小型船舶操縦者施行規則の一部を改正した省令により、上記の条件を満たす漁船は小型船舶となりました。
それに伴い、従来は海技士(航海)1名と海技士(機関)1名を乗り組ませないと操船できなかった特定漁船が、一級小型船舶操縦者免許を保有する1名のみで操船できるようになりました。
特定漁船を操縦するためには
特定漁船を操縦するためには、一級小型船舶操縦者免許において、特定漁船講習の課程を修了して能力限定の解除を行う必要があります。
特定漁船講習を受講して国土交通省に限定解除の申請を行うと、特定漁船の操船が可能となります。
二級小型船舶操縦者免許には特定漁船講習がないため、能力限定を解除することはできません。
そのため、特定漁船の操船を目的に免許取得を目指す場合、一級小型船舶操縦士を取得する必要があります。
特定漁船講習を受けるためには
特定漁船講習の日程や時間、スケジュール、内容などは公開されていないため、最寄りの運輸局の海事課に問い合わせましょう。
なお、令和2年の法改正により、小型船舶操縦士の免許証の裏面には「(表面)に記載のない限定:特定漁船以外の船舶」と青字で記載されるようになっています。
ただし、法改正の能力限定付与によって、これまでの業務が行えなくなったり、操船できる船舶の種類が制限されたりなどはありません。
まとめ
この記事では、漁船の操縦に必要な免許や免許の種類ごとに可能な漁業を紹介しました。
小型船舶操縦士免許があれば20トン未満の漁船を操船することができ、沿岸漁業や遠洋漁業、内水面漁業などができます。
ただし、二級小型船舶操縦士免許は陸岸から5海里までの海域しか航行できないため、沖に出て漁業を行う際には一級小型船舶操縦士免許を取得しましょう。
また、一級小型船舶操縦士免許を取得し特定漁船の講習を受けると、80トン未満の漁船を操縦することも可能です。
遊漁船のようにお客さんがいる事業を行う場合は、小型船舶操縦士免許に加えて特定操縦免許が別途必要となります。
漁船の操船のために船舶免許を取得する際は、目的・漁業の種類などに応じ、取得すべき免許を決める必要があります。
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漁船の操船で小型船舶操縦士免許を取得したいという方も、まずはお気軽にお問い合わせください。