ヨットを操縦するためには、大きさや航行範囲に応じて船舶の操縦免許が必要です。
ヨットと一言でいっても、日本と海外では概念が異なり、種類もセーリングディンギーとセーリングクルーザーに分けられます。
船舶免許の取得を検討している場合は、ヨットにどのような種類があるかを把握しておくことが大切です。
この記事では、ヨットの特徴や種類、免許の必要性を紹介します。
ヨットの特徴と種類
ヨットは、海や湖の水面を帆(セイル)に風を受けて進む乗り物というイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、ヨットの概念は日本と海外で異なり海外では必ずしもセイルを使って進む船がヨットというわけではありません。
ここでは、ヨットの概要や特徴、種類を紹介します。
日本と海外ではヨットの概念が異なる
ヨットと聞くと「白いセイル(帆)がついた船」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、海外では「外洋を航行できる豪華で居住空間を備えた大型の、主にレジャーに使う船」を指します。
外洋を航行したり、数日間以上にわたって船内で生活するため、居住設備があります。具体的には、キッチンやトイレ、ベッドなどが備え付けられています。
そのため、海外でいうヨットは日本のクルーザーのイメージに近いといえます。ちなみに、白い帆がついた船のことを海外ではセーリングボートやセーリングヨットと呼んでいます。
一方、海外ではヨット以外にもシップやボートと呼ばれる船もあります。シップは旅客船や貨物船などの大きな船を指し、ボートはヨットよりもサイズの小さな船のことです。
ボートは消防艇や救命艇、漁船など商用や軍事に使われる船を指すこともあります。
セーリングディンギー
セーリングディンギー(ディンギーヨット)とは、白いセイルがついた小型のヨットのことで、エンジンがなく、風を推進力として走る主に1人〜2人乗りの船です。
セーリングディンギーは帆(セイル)の取り付け方により、以下の3種類に分けられます。
ガフ・リグ
ガフ・リグは、マストが低めでガフと呼ばれる支え棒で大きい帆(メインセイル)の上部を吊っています。メインセイルの形状は台形となり、三角形のセイルよりもセイルエリアを広くできるのが特徴です。
台形のためセイルの上辺をスパー(帆桁)で広げる必要があり、このスパーをガフと呼ぶことから、このタイプのヨットをガフ・リグと呼んでいます。クラシックなタイプで現在ではあまり見られないディンギーの種類です。
キャット・リグ
キャット・リグは、1本マストに1本のセイルを展開するシンプルな構造のヨットで、1人乗り用のディンギーに多いタイプです。
キャット・リグの大きな特徴はその軽量性にあり、一般的なマストとセイルを使ったリグに比べ、船全体の重量を大幅に削減できます。
これにより、船はより敏捷になるため加速と方向転換が容易になります。
また、シンプルな構造でメンテナンスや修理が容易で、1人でも操船できるのがメリットです。
スループ・リグ
スループ・リグは、1本のマストに2枚のセイルを掲げる一般的な帆装のヨットです。
通常2人でセイルの操作をし、操縦性が高いのがメリットで、初心者からベテランまで幅広く人気があり、レースなどの競技用として使用されることも多いです。
これらのセーリングディンギーは、沿岸域など近距離を航行する船で、レジャーとしてまた、スポーツとして楽しまれています。
セーリングクルーザー
セーリングクルーザーは、居住スペースを備えて航海を目的としているクルーザーの種類のうち、セイルに風を受けて風を推進力として航行するヨットを指します。
エンジンで航行するクルーザーはモータークルーザーと呼ばれ、セーリングクルーザーと異なりエンジンが推進力です。
セーリングクルーザーでも補機としてエンジンは積まれており、風がないエリアや、出入港時にはエンジンで航行したりします。
セーリングクルーザーのメリットは、静かな航行で自然と一体となり、セイルを張って風を受けながら滑るような感覚で航行できることです。
さらに、風を推進力として利用するため燃料消費が抑えられ、居住空間を備えているため長期の航海でも快適に過ごせます。
また、船底にはキールと呼ばれる重りのようなものを備え、波など対天候性が高く、小型のセーリングクルーザーでも悪天候や荒波に耐えられ、外洋航海で世界周航などもできる船でもあります。
ヨットの免許の必要性について
ヨットの操縦には船舶免許が必要なケースと不要なケースがあり、船舶免許があってもヨットによっては乗れない場合もあります。
ここでは、ヨットの免許の必要性を紹介します。
ヨットに免許が必要なケース
ヨットの操縦に船舶免許が必要なケースは、エンジンが搭載されている場合です。セーリングクルーザーではエンジンが備えられているため、免許が必要です。
なお、小型船舶操縦士免許で乗れるのは総トン数20トン未満、または全長24m未満のヨットです。
ヨットに免許が不要なケース
ヨットの操縦に船舶免許が不要なケースは、エンジンが搭載されていないヨットの場合です。セーリングディンギーは、エンジンが搭載されていないため、免許が不要です。
また、エンジンがあるヨットでも長さ3m未満で、推進機関の出力が1.5kW(約2馬力)未満なら船舶免許がなくても操縦できます。
免許があってもヨットに乗れないケース
小型船舶操縦士免許で操縦できるのは全長24m未満のヨットとなるため、それ以上の大きさになる場合は海技免許が必要です。
海技免許を取得するためには、船員教育機関に入り、2年以上の乗船経験をかけて資格を取得するのが一般的な流れとなっています。
最終的には海技士国家試験に合格し、海技免許の区分に応じた海技免許講習の過程を修了しなければなりません。
なお、海技免許を有する者を海技士と呼びますが、海技士でも航海士や機関士などの種類があります。
小型船舶の免許があれば多くのヨットは操縦できるため、レジャー目的であれば海技士免許が必要になることはほとんどないでしょう。
ヨットの操縦ができる免許の種類と特徴
ヨットの操縦ができる小型船舶操縦士免許には、2級小型船舶免許と1級小型船舶免許の2種類があります。ここでは、それぞれの免許の種類と特徴を紹介します。
2級小型船舶免許
2級小型船舶免許は、総トン数20トン未満でプレジャーボートは24m未満の船の操縦ができる免許ですから、一般的なヨットなら2級免許で操縦可能です。
操船できる航行区域は平水区域および海岸から5海里(約9km)以内となっており、沿岸を中心とした日帰りのレジャーを楽しむには最適といえます。
2級小型船舶免許は満16歳以上になると取得可能ですが、18歳になるまでは乗れる船の大きさが5トン未満に限定されます。ただし、18歳以上になると自動的に20トン以上の船に乗れるようになり、特別な手続きも必要ありません。
2級小型船舶免許を取得するためには、学科試験・実技試験・身体検査を受け、それぞれ合格しなければなりません。
学科試験はマークシート式で3科目50問出題され、それぞれの科目で50%以上、合計65%以上で合格となります。
また、実技試験は実際に船の操縦を行い、発航から係留、蛇行、人命救助、着岸などを行い、300点満点の減点方式で210点以上だと合格です、
1級小型船舶免許
1級小型船舶免許も2級小型船舶免許と同じく、総トン数20トン未満でプレジャーボートは24m未満の船の操縦ができます。
2級小型船舶免許との違いは航行区域のみであり、1級小型船舶免許には航行区域の制限がありません。外洋で長距離の航海をしたり、セーリングクルーザーで世界周航などを楽しみたい方には、1級小型船舶免許がおすすめです。
1級小型船舶免許は、満18歳以上になると取得できます。なお、2級小型船舶免許を持っていなければ1級が取れないわけではなく、いきなり1級小型船舶免許を取得することも可能です。
試験内容についても、2級小型船舶免許と1級小型船舶免許の実技試験は同じ内容となります。そのため、2級小型船舶免許を持っていると1級小型船舶免許試験の際は実技試験は免除です。
学科試験については、1級小型船舶免許は、2級小型船舶免許の50問に加えて上級科目14問プラスされますが、この14問には海図を使った計算問題などがあり、かなり専門的な内容となります。
2級小型船舶免許を持っている場合だと、この上級科目14問の学科試験のみを受けて合格すると、1級小型船舶免許の取得できます。
ヨットの免許を取るまでの流れ
ここでは、ヨットを操縦するための小型船舶免許を取得するまでの流れを紹介します。
ヨットの航行範囲から免許を決める
ヨットを操縦するために小型船舶免許の取得を検討している場合には、まずどの免許を取得するか決めましょう。
沿岸を中心にヨットを楽しみたい場合は2級小型船舶免許、外洋でもヨットを楽しみたい場合は1級小型船舶免許を選びます。
また、将来的にヨットで海外の海を航行したいと考えている場合は、1級小型船舶免許が必要になります。
ただし、2級小型船舶免許を取得しておけば、1級小型船舶免許は学科試験を受けるだけとなります。
まずは2級小型船船舶免許を取得し、必要に応じて1級小型船舶免許にステップアップするのもよいでしょう。
免許の取得方法を決める
船舶免許を取得する方法として、独学・登録小型船舶教習所・ボートスクールの3種類があります。
独学でも不可能ではありませんが、実技試験は船の操縦が必要となるため、登録小型船舶教習所かボートスクールで講習を受け、資格取得を目指すのが一般的です。
登録小型船舶教習所は国土交通省の登録を受けており、修了試験に合格すると国家試験免除で船舶免許の取得ができます。
一方、ボートスクールは学科や実技講習を受け、国家試験を受けて合格を目指す方法です。
登録小型船舶教習所の中には学科のみ独学で合格を目指し、実技のみ講習や修了試験を受けられるコースもあり、費用を抑えて資格取得に挑戦することもできます。
なお、コースによっても異なりますが、船舶免許は2級で最短2日〜3日で取得することが可能です。
試験を受ける
登録小型船舶教習所やボートスクールで講習を受けたら、次は免許取得のための試験を受けます。
国家試験免除の登録小型船舶教習所だと修了試験、ボートスクールだと国家試験を受けます。
修了試験の場合だと落ちても無料で再試験が受けられるコースもありますが、国家試験は試験に落ちたら再試験料やスケジュールの調整が必要です。
なお、国家試験については学科、実技試験ともに合格から2年の有効期限があります。どちらか合格した場合、再受験する際には合格していない試験のみの受験となります。
身体検査は、国家試験免除で修了試験を受ける場合は医療機関で身体検査証明書を書いてもらい、国家試験の場合は学科試験会場で受けられます。
免許を発行してもらう
船舶免許の修了試験や国家試験に合格したら、免許証を発行してもらいます。
試験に合格していても、免許証を発行して乗船時に携行しないとヨットの操縦はできないため注意しましょう。
独学で国家試験を受けた場合は合格証明書に免許の申請書類を添え、合格した日から1年以内に最寄りの運輸局で手続きが必要です。
登録小型船舶教習所やボートスクールに通っていた場合は、通常、免許申請は教習所やスクールが代行します。
なお、船舶免許は取得してから5年ごとに更新が必要となるため、取得したあとは更新を忘れないように注意しましょう。
まとめ
この記事では、ヨットの種類や特徴、必要な船舶免許の種類を紹介しました。
エンジンが搭載されているヨットを操縦する際には船舶免許が必要となり、免許の種類には1級小型船舶免許と2級小型船舶免許の2種類があります。
距離に関係なく航行したい場合は1級小型船舶免許、沿岸のみの航行なら2級小型船舶免許を取得しましょう。
「ヨットの操縦がしてみたい」「ヨットの免許を取りたい」という方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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